はまった!!
「お茶フェス」外部スタッフとして参加した2020年に代表の三浦真美さんからこのコミック絶対面白いから読んでと「へうげもの」全25巻を渡された。
ちょうどお茶フェスに参加して、お茶の味の違いや入れ方による味の違いなど、お茶は今日どれを楽しむか迷うゲームだと感じていました。
お茶フェスに参加しなければ絶対に読むことがなかったであろう「へうげもの」は、真美さんにとって作者といつか対談をしてみたいフェーバリットコミック。
戦国武将としてではなく茶道で知られるようになった「古田織部」という主人公に焦点をあてた歴史長編ギャグマンガ。織田、豊臣、徳川の戦国時代は、NHKの大河ドラマなどで何度も見た時代なのに「古田織部」の名を聞いたことがない。架空の人物かと思いました。
織部は、茶道をたしなまなければ出会うことがない人物。と言うのも千利休亡き後に筆頭茶頭となり天下一の数寄者。千利休の弟子であった織部の指導で織部好みの奇抜で斬新な形や文様の茶器などが「織部焼」とよばれました。
戦国武将というより茶道や茶器、美術や建築など、戦国時代に花開いた「美」や「数奇」でこの時代に輝いた人ですから、時代劇に登場することは無く。茶道で戦国時代に登場するのは「千利休」。古田織部は千利休の弟子7人の一人でした。
「へうげもの」
山田 芳裕(やまだ よしひろ、1968年1月7日 生まれ、新潟県新潟市出身の漫画家)が『モーニング』で連載した作品。
ウキペディアによると「へうげる(ひょうげる)」は「剽げる」とも書き、「ふざける」「おどける」の意。
- 単行本/講談社より「モーニングKC」レーベルとして刊行。全25巻
- 文庫本/講談社文庫より刊行。文庫の出版形態としては8巻をもって完結(単行本11巻までの内容を収録)となっていたが、2014年1月に9巻10巻が発売
- テレビアニメ/2011年4月から2012年1月にかけて、NHK BSプレミアムにて放送。全39話、コミックの第9巻までをアニメ化。
- 登場する名物・業物/54種類
古田織部の魅力
戦国時代、織田信長、豊臣秀吉に仕えた戦国武将・古田織部を主人公として描いた歴史漫画作品。最後は、徳川家康との因縁でこの物語が終了する。
雑誌あらすじでは「これは『出世』と『物』、2つの【欲】の間で日々葛藤と悶絶を繰り返す戦国武将【古田織部】の物語である」と紹介されている。戦国大名を紹介するストーリーとしては、「茶」と「数奇」に生涯を捧げた人。わかりやすく言えば、茶の湯を基本として芸術に目覚め、新たな美術的視点、想像を超えた美意識の確立をめざした。当時としては新しい美の挑戦だと思います。
最初の7巻までは、普通の戦国時代物かとあまり引きつけられることも無く読み進むと、どんどん茶の湯や芸術にのめり込む古田織部の葛藤に引き込まれて行きます。
何がこんなに引き込まれるのかと考えてみましたが、「武」では無く「数奇」に視点をあてて、戦国時代の「美」の視点に引きつけられます。
戦国時代において「美」は価値のある茶碗などが功績に対しての対価であったり、いくら払ってもほしいモノになっています。そこまでのブランドに仕上げる熱意や地域の文化を高める上での仕事として評価されています。
「好きこそものの上手なりけれ」と言う言葉は、茶道を確立したという千利休の戒めであるとされています。まさに、この言葉のようなドラマです。
とくに25巻最後の数寄を否定する家康を最後に笑わせることに成功したときの「顔」表情の画は最高です。このコミックの至る所にユーモアにあふれた表情や加藤清正の顔が元プロボクサーの顔であったり。剣術で野球の一本足打法が登場したり。本作は「世界初の本格的歴史長編ギャグマンガ」とも言われているのがよく分かります。
「へうげもの」を読んで思うことは、ぜひNHK大河ドラマでやってほしい。これまでの「武」一辺倒だった戦国時代に花開く「数奇」の文化があったこと。視点が変わることで、織田、豊臣、家康の人間らしさが見えてくること。「美」とはユーモアと笑いと美しさが必要なのだと教えられます。
読み終えて
このコミックを読む人は、歴史が好きな方。でももっと違う視点で刺激的なストーリーが読みたい方。芸術が好きな方。茶道に興味がある方。茶道まではいかないがお茶好き。
このコミックを読んでいる間に「古田織部」に近づく二つの体験がありました。
一つは、新潟県上越市にある「木村茶道美術館」に取材で伺った時に、この美術館に「織部焼」の茶碗が所蔵されていること。本物は見ることができませんでしたが、館内のポスターで拝見することができました。作品はすぐに織部焼と分かります。戦国時代の現代アートといえるような作品ばかりです。先月もNHKの「美の壺」でも織部焼を紹介していました。
もう一つは、新潟県村上市の九重園さんを取材したときの9代目当主のインタビューで、戦国時代は、戦の褒美は領地などを与えていましたが全ての人に与える領地は無く「茶碗」などを褒美として与えていましたというお話を聞きました。
戦国時代の別の側面から見ると「茶道」「数奇」は時代を動かすごい力を持っていた。これをブランド化したのが千利休であり古田織部。大金を払ってでもほしいブランドに生涯をかけて育てた。ブランドをどのように育てるものかを知りたい方はぜひ25巻読んでみることをオススメします。最後の25巻は感動しました。