はまった!茶道フェスきっかけで読んだ『へうげもの』
2020年、お茶フェス外部スタッフで参加したとき、代表の三浦真美さんから「絶対面白いから読んで!」と渡されたのが『へうげもの』(全25巻)。
当時、お茶フェスで「今日はどのお茶をどう淹れて飲むか」という楽しみに目覚めていた私は、まさか歴史ギャグ漫画にここまで引き込まれるとは思いませんでした。
「作者といつか対談したい」というほど真美さんお気に入りのこの作品は、戦国時代を『美』と『笑い』で描く異色作。
戦国時代は大河ドラマで何度も見てきたのに、「古田織部」という名前を聞いたことがありませんでした。架空の人物かと思ったほどです。
古田織部とは?
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えた戦国武将であり、千利休の弟子として茶の湯の道を極めた人物。
利休亡き後、筆頭茶頭となり、奇抜で斬新なデザインの茶器を作り出し「織部焼」と呼ばれます。
戦国の世で「数寄(すき)」と呼ばれる美や茶の湯の道に命をかけた人でありながら、大河ドラマにはほとんど登場しません。
茶道に触れなければ知ることすらなかった“戦国時代の美の革命家”です。

『へうげもの』とは?
『モーニング』(講談社)で連載された山田芳裕さんの歴史ギャグ漫画。
タイトルの「へうげる(ひょうげる)」は「ふざける・おどける」という意味で、その名の通り笑いとユーモアに満ちています。
- 単行本 全25巻
- テレビアニメ NHK BSプレミアムで全39話放送(第9巻までをアニメ化)
読んでみた感想
最初の数巻は普通の戦国物語のように淡々と進みますが、読み進めるうちに織部が茶の湯と芸術にのめり込んでいく様子にどんどん引き込まれました。
何が面白いのか?
それは戦国時代を「武」ではなく「美」の視点で描き、茶碗ひとつが莫大な価値を持つ時代の熱気が伝わるから。
戦国時代、土地の褒美をすべての武士に与えることはできず、茶碗や美術品が褒美となり、その価値を創造し高めたのが千利休であり古田織部でした。
大金を払ってでも欲しいものをブランド化し、文化として根づかせていく。その熱意と狂気がこの作品の根底にあります。
特にラストの第25巻、数寄を否定する家康を笑わせたときの織部の表情は最高です。
加藤清正の顔が元プロボクサー風だったり、剣術シーンに一本足打法が出てきたりと、細かいギャグも秀逸で笑えます。
『へうげもの』が面白いのはどんな人?
- 歴史好きだけど新しい視点で戦国時代を知りたい人
- 茶道や工芸・美術に興味がある人
- 「ブランドを育てるとはどういうことか」を知りたい人
- 笑いながら読める長編漫画を探している人
読んでいる間の2つの体験
この漫画を読んでいる間に、私自身が織部に近づく体験が2つありました。
1つは、新潟県上越市の「木村茶道美術館」で織部焼の茶碗をポスターで見たとき。戦国時代の現代アートのような作品で、一目で織部焼だと分かる力強さがありました。
もう1つは、新潟県村上市の「九重園」取材時、9代目当主から「戦国時代、領地ではなく茶碗が褒美として与えられた」という話を聞いたとき。
茶の湯と美は戦国時代を動かす大きな力だったと実感しました。

まとめ
『へうげもの』は、戦国時代を茶碗と笑いで駆け抜けた古田織部という男の生涯を、笑いながら学べる唯一無二の歴史ギャグ漫画です。
もし「ブランドを育てるとは何か」「美の力で時代を変えるとはどういうことか」に興味がある方には、ぜひ全25巻をおすすめします。
ラストは本当に感動しました。