ブランドについて考えるとき、私たちはしばしば「どうやってブランドをつくるか」という発想をしてしまいます。 コンサルタントのアドバイスをもとにロゴを整え、広告を打ち出し、差別化を試みる。確かにそれらは大切な取り組みですが、「それで一気にブランドが完成した」という話は、ほとんど聞きません。
むしろ実際には、長年の試行錯誤の中で、お客さまの声に耳を傾け、サービスや商品を愛し抜いた結果、ある日ふと「この会社は信頼できる」「このお店でなければ」と人々に支持されていく。 ブランドとは、狙ってすぐに手に入れられる称号ではなく、積み重ねの先に“与えられるもの”に近い存在なのだと思います。

差別化すれば成功するわけではない
ビジネスの世界では「差別化が必要だ」とよく言われます。 確かに「他を選ばない理由」をつくることは重要です。 しかし、その差別化が本当に求められているかどうかは別問題です。
例えば「ものすごく高価なオーディオ機器」。音は普通だけれど、デザインが抜群に美しく、部屋に置くだけで存在感がある。 そうした商品は一部の人にとって唯一無二の価値を持ちます。 でも、それが万人に響くわけではありません。
ブランドの価値は「正しく差別化したから」生まれるのではなく、「結果として人々に選ばれ続けたから」生まれるのです。そこには計算できない偶然やタイミングも関わってきます。
ブランドに大きさは関係ない
ここで誤解しやすいのが、「ブランド=世界的企業」というイメージです。 確かに任天堂やApple、スターバックスのような名前は、誰もが知る世界的ブランドです。 ですがブランドは必ずしも巨大である必要はありません。
地域に根ざした小さなパン屋さんが「この町で一番おいしい」と愛されることも、立派なブランドです。 大切なのは規模ではなく、「誰にとって特別か」ということ。 世界規模でも、地域限定でも、「他を選ばない理由」があるなら、それはすでにブランドとして成立しています。
計算できない価値の先にあるもの
こうして整理してみると、ブランドには次のような特徴が見えてきます。
- ブランドは「つくる」ものではなく「育つ」もの
- 差別化すれば必ず成功するわけではない
- ブランドは規模の大小に関係なく存在する
- 偶然や積み重ねの結果として、ある日「ブランド」と呼ばれるようになる
言い換えれば、ブランドとは「人々が与えてくれる称号」です。 経営者や職人がいくら「うちはブランドだ」と言っても、社会がそう認めなければ成立しません。 だからこそ、ブランドは尊いものとして輝くのだと思います。
あなたにとってのブランドは?
では、ここでひとつ問いかけです。 あなたの身近に「他ではなく、ここで買いたい」「この商品でなければダメだ」と思うものはありますか?
それこそが、あなたにとってのブランドです。